技術者34歳、技術戦略部門に行く(1)

入社して10年ほどが経ち、自分が担う仕事のほとんどを、自分の力でこなせるようになっていました。
周囲からも頼りにされるようになり、少し仕事を流し気味にこなしていた、そんな頃です。

突如、人事異動を命じられます。
異動先は、まったくの門外漢だった「全社技術戦略立案部門」でした。

この部門のミッションは、全社の研究開発や生産技術開発について、中長期的な視点で戦略を立案すること。
さらに、多岐にわたる開発テーマの進捗を管理し、上層部へ報告することも求められていました。

そして会社は、人材育成の観点から、30代半ばの技術者を数名選び、2〜3年間だけこの業務を経験させていました。

各人が10〜20件ほどの開発テーマを担当し、その進捗管理を行います。

私の上には課長がいて、その上には戦略立案部門の部長がいて、さらにその上には常務取締役である本部長がいる、そんな組織でした。

例えば、開発テーマについて開発部長が本部長へ報告する場では、本部長と開発部長が正面で向き合って座り、私はその側面に座って会話を聞きながら議事録を作成します。

それだけなら、良いのですが・・・

お二人の白熱した議論(ケンカ?)の最中、突然、

「で、君はどう思う?」

とか、

「前回、〇〇君(開発部長)は違うことを言っていたよな?」

などと、いきなり矢が飛んできます。

開発テーマ管理においては、開発部長との人間関係がとても重要です。
開発部長の困りごとを知り、全体として先手を打つためには、信頼して何でも話してもらえる関係である必要があります。

一方で、全社戦略立案部門のメンバーには、本部長の「目」となり、「手」となり、場合によっては「口」となることも求められます。

この板挟みの日々は、「自分も技術者として一人前になったかな」と少し思い始めていた私の目を、改めて覚まさせてくれるものでした。技術や特許だけ見ていれば良かった頃とは違う世界があったのです。


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