他社特許によってプリンター事業への道が閉ざされ、私たちは、自分たちの技術を生かせる場所を探し続けていました。
そんな中、インク種への適用性が高く、高速吐出が可能だった私たちのインクジェットヘッドには、生産装置用途としての活路が見えてきました。
詳細な用途は書けないのですが、畳3枚分ほどの大きな基板上にランダムに発生する穴欠陥に対し、修正液を塗布して埋める、という用途です。
この用途に対応するため、私たちには2つの課題がありました。
1つ目は、大量生産ではなく、少量のインクジェットヘッドを安定して継続生産できる仕組みづくりです。
インクジェットヘッドを小ロットで生産することは、実はとても難しいことでした。
大量生産であれば、設備や治具を潤沢に準備でき、生産人材も工程ごとに専任化できます。しかし、小ロット生産では、安価な治具を工夫して設計・活用すること、さらに複数工程を担える多能工の人材が必要になります。
私は、この小ロット生産体制づくりの推進役となり、プロセス設計と、それに必要な治具・作業手順の整備を進めました。
インクジェットヘッドの生産は、ほとんどの工程がクリーンルーム作業です。実際に生産を担っていただく方々の多くは、それまでクリーンルームに入った経験がありませんでした。一緒に試行錯誤しながら、必死でプロセス改善を行ったことは、当時は本当に大変でしたが、今では良い思い出です。
2つ目は、大面積基板に点在するランダムな穴欠陥を、効率的に埋めることができる装置の設計でした。
私たちは、さまざまな議論を重ねながら、効率的に処理できる独自システムを考案しました。
そして、それを実際に製作して工場へ導入するとともに、特許の権利化も進めました。
以前は「技術を書けばいい」と思っていました。
しかし、実際には“どう守るか”まで考えなければ、事業は守れない――。
そんなことを痛感しながら、特許を書いていました。
「効果を生み出す技術思想」で請求項を書くこと。
そして、一つの装置構成であっても、発明のポイントを多面的に抽出し、特許群として出願していくこと。
そこには、他社特許によって苦しんだ、私たち自身の経験が生きていました。


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