経営側と現場のギャップをどう埋めるか――。
これはもう、単純な話です。
私たちが、その間に入って埋めるしかありません。
ただ、書くのは簡単ですが、やり切るのは本当に大変でした。
当時、本部長は60代半ば、開発部長は50代半ば、開発課長は40代。
そして、私たちは30代半ばでした。
私たちは、少し前まで開発課長のもとで、それぞれ技術開発を担当していた立場です。
開発部長や開発課長の指示のもと、それが当然正しいものだと疑うこともなく、日々開発を進めていました。
そして、キャリアローテーションの2〜3年が終われば、再び元の部署へ戻り、技術開発を行うはずなのです。
そんな私たちが、先述のように、経営施策に沿った技術戦略の骨子案を作成し、本部長へ直接報告して、修正指示や了承をいただくことになります。
この作業も、なかなか辛い。
私たちは、少し前まで“ただの技術者”でした。
一方、相手は30歳近く年上の経営幹部です。
「視点が低い」
「戦略として論理的ではない」
「これでは足りない」
――そんな指導を、細かく受けます。
この過程を通じて、私たちはようやく、経営側が重視する時間軸や事業インパクトなどを含めた経営側の考え方や想いを理解し、戦略骨子を形にできるようになるのです。
そして次に、その戦略骨子を開発部門へ説明し、各開発テーマについて資料作成を依頼します。
しかし、開発部門から上がってきた資料の多くは、当然ながら、経営側の想いを十分に反映できていません。
……仕方ありません。
私たち自身も、冷や汗をかきながら本部長に直接指導を受け、ようやく少し理解できるようになった程度なのです。
ここからが、私たちの本当の戦いでした。
まずは、私たちが開発部長や開発課長のもとへ行き、自分たちなりに理解した経営側の考えを説明し、資料修正をお願いしていきます。
ただ、この修正というのは、単に言葉を整えるだけではありません。
- 達成目標値
- 達成時期
- 経営貢献額
など、開発部門にとって簡単には譲れない部分にも踏み込むことになります。
技術者だった私たちは、心の中では分かっています。
「技術開発なんて、正直やってみないと分からない。だからこそ挑戦するんだよ……」
でも、その気持ちを抱えたまま、少し前まで上司だった開発部長や開発課長に、
「本部長の考えはこうです。なので、ここを修正してください」
――とお願いしなければならないのです。
もちろん、
「はい、分かりました」
とはなりません。
「この計画は、こういう根拠があって立てている」
「現場を知らないのに、急に言われても困る」
「それ、本当にそうなの? 本部長に確認してきて」
――そんなやり取りになります。
しかも、こうしたことが、ほぼすべての開発テーマで起こります。
だからといって、すべてを個別に本部長へ確認するわけにもいきません。
そこで私たちは、開発部門から出てきたズレや違和感を整理し、それを踏まえて本部長の考えを確認していくのです。
その上で、再び開発部長や開発課長と話をします。
その際には、単なる伝言役ではなく、
「私なら、こう考えます」
という、自分たちなりの修正案を作成し、それを説明しながら納得してもらうよう努めました。
実は、この修正案を進める上で、昔、私たちと同じように技術戦略担当を経験し、今は開発部門へ戻っている先輩たちに助けてもらうこともありました。
「仕方ないな。部長には、“下から見る限り、できると思います”って言っておくよ」
――そんな感じです。
そして、開発部長や開発課長への最後の説得は、結局こうなるのです。
「開発部門に戻ったら、私も一緒にやります!」
このキャリアローテーションは、そういう意味では、技術者の“経営に対する当事者意識”を高める仕組みとして、よくできていたのかもしれません。
経営層と現場の認識ギャップというのは、結局のところ、双方が互いに当事者意識を持てるような仕組みや環境を作れるかどうか――。
そのことが、本当に重要なのだと感じました。


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