本部長が年に2回、経営会議で報告する全社技術戦略資料――。
その作成も、私たちの重要な仕事でした。
報告時間は、わずか30分足らず。
しかし、これがまた大変なのです。
全社技術戦略を、その年の全社経営施策と同期させる形で整理し、さらに各主要開発テーマについても、経営施策に沿った形で資料へ落とし込んでいきます。
要するに、
「これだけお金と時間をかけて開発を進めていますが、ちゃんと全社施策に沿っています。そして将来、これだけの経営貢献が見込めるのです」
――という形にまとめていくのです。
ただ、先述の通り、全社技術戦略には、実際には“開発テーマのパッチワーク”という側面もあります。
私たちはまず、全社経営施策と全社技術戦略の両方を見比べながら、報告骨子の切り口を決めていきます。
例えば、全社経営施策の一つが「フリーキャッシュフローの充実」だったとします。
すると、全社技術戦略の中の施策としては、
「工程間の仕掛在庫削減に向けた生産・管理工法の革新」
――のような形になります。
ここで、自分たちが抱えている複数の開発テーマを俯瞰しながら、
- プロセス技術の開発テーマ
- 検査技術の開発テーマ
- 管理システムの開発テーマ
等を、施策の具体策として紐づけていくのです。
ただ、実際には、
「“仕掛在庫削減”だと、プロセス技術とは少し合わないよね」
「じゃあ、“歩留まり改善”にする?」
「でも、“歩留まり改善”だと広すぎて、戦略としてエッジが効いていないよね……」
――そんな議論を延々と繰り返します。
なんだか、少し変ですよね。
もちろん、この例がすべてではなく、一場面に過ぎません。
技術戦略立案という仕事には、こうした“言葉合わせ”のような側面も、確かにありました。
ただ、この過程を通して開発テーマの全てに「経営的にどんな意味を持つのか」という軸で整理し直すことに繋がる、そんな想い取り組んでいました。
もう一方で、私は、この仕事を通じて、企業が抱える本質的な課題も感じていました。
経営者が直近で取り組みたい経営課題と、現場が日々感じている課題は、必ずしも一致していないのです。
これは、ある意味では当然のことです。
経営者は経営者の視点で事業を考え、現場は現場の視点で仕事を考える。
そして、どちらも本気で取り組んでいます。
その中で、上からも下からも、さまざまな開発課題が生み出されていく。
だからこそ、
「今やっていることは、本当に間違っていないのか」
「ちゃんと全体最適になっているのか」
――それを問い直すことが、この全社技術戦略を策定する本質だったのかもしれません。
もちろん、経営方針として明確な方向性を持ち、中長期的な視点で事業戦略を立案し、それを実現するための技術戦略や開発テーマが存在します。
ただ、組織の大小に関わらず、経営と現場の間にあるギャップを埋めることは、一体感のある技術開発を進める上で欠かせないことだと感じました。
……ここまで、少し問題点ばかりを書いてきましたが。
私たちは、この現状を理解したうえで、そのギャップを埋めるために、この後さらに奔走していくことになります。


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