今回の新規事業開発は、これまでとは状況が大きく異なっていました。
経営危機の中で、この開発には、資金支援先に対して「会社再生のイメージ」を早急に示す、という意味合いもあったのです。
そのため経営側からは、できるだけ早くキャッシュを生み出すことが求められ、私たちは、
「石ころでもいい。売れるものなら売ってこい」
とまで激励されていました。
そうした状況では、自分たち主体で中長期の成長戦略を描くことは難しくなります。
営業部門が既存顧客の困りごとをヒアリングし、その解決に向けた開発を進める――。
顧客の誰かが発した一言を、そのまま受け止め、それを解決するための技術だけを考える。
そして、自分たちに知見がなければ、一から調べ、試し、形にしていく。
そんな開発が続いていました。
複数の顧客の困りごとや要望に応じて、多数の開発テーマが並行して進みました。
一方で、新たな活躍の場を求める若手・中堅社員の退職は続き、残った者たちは、去った人の案件を引き継ぎながら、一人で複数テーマを抱えることが当たり前になっていきました。
付け焼き刃の開発で、顧客の期待に応えられるものは決して多くありませんでした。
経営側は、嵐の中で会社という舟の舵取りを必死に行う。
営業部門は、会社再生のため、自らの顧客との関係性を頼りに、少し背伸びをしながら案件を獲得してくる。
そして開発者は、その案件を実現するため、たとえ専門外の領域であっても学び、期待に応えようとする。
皆、それぞれの立場で必死だったのです

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